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親権者・監護権者(面会交流)の判断は、どんな基準でするのでしょう?

親権者・監護権者(面会交流)の判断は、どんな基準でするのでしょう?

1、これについては、時代により変わってきています。
従来は、母性優先、現状優先(継続性の原則) 、兄弟不分離等の原則に従っていました。
現在は、両親・子供それぞれの要素を「子の利益」に照らして、総合的に判断するようです。
「子の利益」とか「総合的判断」というのは、定義もなくそれ自体、自明なものではありません。
最終的には、調査官の調査や裁判官の家族観によると思われます。  そのため、同じ事件でも、家庭裁判所の裁判官とその上級審の高等裁判所の裁判官の「子の利益・福祉」の考えが違うと、異なる結果となります。当事者としては、裁判官を変えてくれという権限はありません。したがって、担当裁判官の家族観を汲み取り、何とか理解してもらえるように努力する必要があります。「お上に裁いてもらう」という他力本願では、結果は見えてます。

2、東京家裁では、一応次のようなものが質問されるようです。
学歴、職歴、婚姻歴、勤務先、業務内容、職務内容、勤務時間、休日、残業の頻度、収入と支出、既往症、健康状態、住居の間取り、利用状況、近隣の環境、子供の状況(通園・通学校、健康状態、発育状況など)、これまでの監護実績、両親の不和の説明内容、監護補助者の年齢、住所、職業、健康状態、続柄、監護計画など
を総合考慮するということで質問されるのでしょうか、なんとなく違和感があります。

家庭裁判所としては、子供の置かれた環境を知りたいということでしょう。ただ、質問されるほうからすれば、学歴がなかったら、再婚歴があったら、一流企業でなかったら、子供のためにと思って働いて休日出勤・残業があったら(好きで休日出勤・残業をしている人はいないでしょう。おまけに残業代も出ないサービス残業ならなおさらです)、収入が少なかったら、既往症があったら、 ワンルーム6畳1間だったら、貧乏人が多い安アパートの環境だったら、これまで仕事一筋で養育を妻に任せていたら、子供の年齢が幼かったら、不適格なのか、といった違和感があります。これらの逆の場合だったら適格なのか、というのも違和感があります。こんなことで判断されてはたまらない、と言う人は多いのではないでしょうか。

子供にとって、裕福な環境がいいに決まっています。しかし、長い目で見た場合、貧乏な家庭環境の子供がだめな人間になり、裕福な環境の子供がりっぱな人間になるかというと、そうではありません。貧乏生活で我慢強さが養われ野心的になり、他方、裕福な生活で怠惰・わがままな人間になる例はたくさんあります。

3、また、判断基準が変わったといっても、裁判官の家族観というものは、そう簡単に変わるものではありません。
例えば、平成19年8月22日の東京高等裁判所決定があります。事案は、次の通りです。「父親が2人の子供を監護中、母親が子供らを通園先から無断で連れ去って居所を隠した。面会交流調停中に、父が子供らに送ったラジコンにGPS位置情報確認装置を潜ませていた為、子供らは父に会いたくないと述べている」。
東京家庭裁判所は、わずか夏休みに1回、わずか2時間を認めました。(ひこぼしと織姫の伝説以下です。二人は一夜あったわけですから)。ただ、決定文からは分からない父親の性格等があったのかもしれません。

ところが、高等裁判所は、「子供らは、父親と面接をしたくないと述べている。その理由は、父親がGPS(位置情報確認装置)を潜ませたラジコンを送ったからである。不信感がある。父親は、今後、子供らを連れ去ったり居所を調べるなどのことをしないと述べている。現在の状況で、子供らとの面接交渉を許せば、子供らを父親と母親とのあいだの忠誠葛藤の場面にさらすとになる」として認めませんでした。

父親が子供の居所を知りたいというのは、当たり前のことではないでしょうか。ましてや、母親が、子供を連れ去り、その居所を父親に知らせないために、やむを得ずGPSをラジコンに潜めたことが、それほど非難されることでしょうか。またそれを知った子供が父親に不信感を抱くというのも異常です。父親が、それだけ子供の居所を知りたい、子供がどうしているか知りたいと気遣っている証です。母親からの心理的な影響があるとは考えなかったのでしょうか。

子供は、親の私有物ではありません。また、母親が面会交流を拒絶しているために、子供に母親と父親との忠誠に葛藤を生じると言うのであれば、母親は、子供に対し父親の悪口を言い、面会交流に対して徹底的に拒絶し非協力的態度を取れば、いとも簡単に面会交流は認められなくなります。
まさに、「子の利益」として裁判官が考えていることがものの見事に現れています。

こんなことでは、日本がハーグ条約に加盟して、中央当局(日本政府・外務省)に子供の居所を突き止める義務(条約第7条第2項)があることを、理解できないでしょう。

なお、具体的な事案については、弁護士にご相談ください。

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