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親権者や面会交流にあたって、裁判所の調査事項や判断事項はどんなものでしょうか?

 一般的には、両親それぞれの監護能力として、年齢・性格・教養・健康状態、経済力としての資産・収入、職業、住居、生活態度、居住環境、教育環境、子供に対する愛情の程度、これまでの監護状況、実家の資産、親族の援助の可能性などが挙げられています。また、面会交流実施の許容性も考慮要因とされています(秋武憲一著「離婚調停」153頁より)。 

これらの要素を考慮しながら、 
      ・現在までの子供の養育状況
   ・今後の養育方針及び養育環境
   ・一方当事者が親権者として適当な理由 
   ・他方当事者が親権者として不適切な理由を検討するとされています。

  これまでの子供の養育環境については、日本の社会構造が、夫が働き、その給料で一家の生計を支え、妻は専業主婦かあるいはパートをしながら家事を受け持つのが多数でしょう。裁判官自身についてもその典型例でしょう。 このことを強調すれば、裁判官が離婚した場合、親権者たる資格を有する裁判官は、まったくとしていないことになります。裁判官は、常に紛争の判断者として望んでいるため、事件を自分のこととして考えるようなことは少ない嫌いがあります。社会の一員であることを忘れてしまっています。 

 これについて、アメリカの裁判所では、離婚前のことより、離婚後、子供をどうやって育ていくかということに調査の重点を置くとされています。 実際、母親が子供の養育をもっぱら出来たのは、父親が妻子の生活を支えるため、したくもない残業をしてきたからです。そのことを抜きにして、これまで、どちらが子供の面倒を見てきたかだけを取り出して判断するのは、片手落ちというもんです。しかし、裁判官には、そのような家庭の成り立ちの全体的考察をする人は少ないようです。 

 次に 家庭裁判所調査官は、裁判官の調査命令を受けて、同居親との面会、家庭訪問などを実施し、子供の心情も調査します。 その歳、当然のことながら、子供に「お父さんとお母さんとどっちと住みたいか。会いたいか。」とは決して尋ねたりはしないそうです。 

 ここで、通常の家庭であれば最も基本的な子供の養育に関する質問事項が抜けていることに気がつきます。
  それは、親が子供をどんな人間に育てるか、ということです。通常、一般の家庭では、子供をどんな人間に育てるかは、最重要問題でしょう。両親の意見が合えばよいですが、そうでない場合、深刻な意見の対立になります。
 
 世の中には、いろんな家庭・価値観があり、例えば、親が生長の家信者、共産党員、立憲民主党員、自民党員等の場合を考えてみても、子供もその信者、支持者にしたいと当然のごとく思っているはずです。 

 価値観が多様化し、それが尊重される社会では、家庭裁判所では、いちいち各家庭について、「子供をどういう人間に育てるか」ということに、立ち入るのは適当でありませんし、立ち入ったところで、その優劣を判断するのは適当でないということで、立ち入るようなとはありません。  したがって、裁判所がそこまで立ち入ることは適当では無いでしょう。 
 
 しかし、少なくとも、親権をめぐって争っている場合、これまで紹介してきた裁判例にあったように、親権者とならなかった親に対して、子供が「お前は死ねばいいんだよ、このクソやろう。」というような(東京高等裁判所の事例)では、自分に愛情を注いでおり、生活の支えとなる養育費を出している親に対して憎しみを植え付けるような育て方をする監護親は、親権者としての根本的な適性を欠いているのではないでしょうか。

 裁判所は、裁判例で見ますと、子供の心理的安定を重視していますが、心理的に安定していても、そのように歪んだ人格に育て上げる親には、親権者としての資格がないのではないでしょうか。アメリカで流行のフレンドリーペアレントと言う輸入の概念を持ち出すまでもありません。日本にも

山鳥のほろほろと鳴く声きけば ちちかとぞ思ふははかとぞ思ふ(行基)

と言う短歌があるように、子供が両親を慕うのは自然なことです。 それなのに、自分を支えている非親権者に対して「死ねばいいんだ」というような人間に育て上げるのは、おかしいと言うべきです。確かに、裁判までして別れた相手のことですから、憎しみを持つのも分かりますが、子供に非親権者への憎しみを植え付けるのは、行き過ぎであり、親権者としてふさわしいとは言えません。しかし、裁判所は、子供が心理的に安定していれば、それほどこのことを重視しません。子供が面会交流を嫌がるのも子供の意思であり、尊重すべきことなります。残念なことです。

2018.5.10 追加
名古屋地裁で、平成29年4月25日、妻が虚偽の夫によるDV申告をして、夫と子供の面会交流を妨害したことして、55万円の損害賠償を命じる判決 yohho


 

 

 

 

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