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アメリカ家族法から学ぶ面会交流

アメリカ家族法から学ぶ面会交流
アメリカ家族法

アメリカ家族法

アメリカ家族法から学ぶ面会交流

日本とアメリカは、歴史、文化、宗教、構成民族等も違います。法律も、日本は1つの法律ですが、アメリカは、連邦制で、州ごとに法律が定められています。したがって、日本で民法という1つの法律があるのと違って、アメリカでは 1つの家族法があるわけではなく、州ごとに家族法があります。しかし、州ごとに家族問題の裁判管轄が違っていたりすると混乱しますので、モデル法としての統一家族法典があります。面会交流に関して言えば、子の扶養・監護手続きに関する統一法(Uniform Child  Custody Jurisdiction and Enforcement Act)があり,各州がこれを採用すれば、採用した州は同じ法律を持つことになります。 このように、日本とアメリカは、いろんな面で異なっています。

しかし、現在、アメリカでは、家族の崩壊が進み、子供の親権について熾烈な争いが繰り広げられています。
日本も、それに似てきています。日本でも、ストーカーとかDVとかアメリカと似たような現象が起きました。離婚や面会交流についても、アメリカの法制度は参考となります。ここ数年、家庭裁判所の面会交流に対する考え方が変わってきたのは、アメリカの影響によるのではないかと推測されます。
そこで、参考になるのではないかと、アメリカ家族法を一瞥しました。以下は、「Marc Perlin、Family Law,(2008)」によります。意訳しており、正確性は保証しません。原典は、アマゾンで入手できます。

1,アメリカ家族法では、離婚裁判の間、裁判所は、仮の監護権者と面会交流を定めることができます。
日本でも、離婚の調停裁判が長引く場合は、仮の措置として、同じようなことを定め、但し、その実績を監護権者判断の資料としないとしたらどうでしょうか(継続性の原則の資料としない)。そうしないと、調停・審判が長引けば長引くほど、子供は同居していない親の顔を忘れてしまいます。なお、すでに一部似たような取り扱いもあるようです。

1,監護権者判断の基準は、日本とほぼ同じです。まず、父親と母親は、監護権について同じ権利を持ちます。子の意思、子の健康、親の行為(非行)、どちらの親がこれまで優先的に子の監護をしてきたか、相手親に対して面会交流につき協力的か、DV、宗教、兄弟の分離などの要素を比較考慮して決めます。 過去どうであったかより、将来どうするかを重視します。

1,監護親が子供と共に引っ越しが許された場合、裁判所は、他方親に対して、夏休みの間とか長期間の面会を与えます。ある裁判所では、 スカイプSkypeなどのウェッブカメラWeb cameraを利用して子と非監護親との交流を図るようにします。

1,非監護親の面会交流は、権利とされています。

1,注目すべきは、面会交流をする内容の制限事項です。
非監護親は、面会交流の際、子供がどういう活動をするかを決定する広い権限を持っています。
第一審裁判所が、「監護親たる母親は、面会交流の間、子供がミニバイクに乗るかどうかを決める権利がある。」としたのに対し、控訴裁判所は、「その活動は日常生活において合理的に予測される限度を超える危険があるとの調査結果がない限り、そういう制限は適切でない。」としました。

両親の争いが激しい場合、裁判所が面会交流を命じたとしても、例えば、監護親たる母親が子供への父親の影響をなるべく少なくしようとして、わずかの面会交流時間の子供の活動についても、あらかじめ子どもに、例えば「遊園地に行くのよ」とか言い聞かせるようなこともあります。非監護親たる父親としては、子供に、山とか海とか魚釣り、スキー・スケート、キャンプとか、母親ではできないような経験をさせたいと思っても、母親から言い聞かされた子供が拒否すれば、どうしようもありません。父親として、子供にいろんな経験をさせ、その性格・人格・好み等を育んでほしいと思ってもできません。
逆に、父親が監護親の場合も同様です。父親には母親の役割を担えません。

1,一般的に、非監護親の養育費の支払義務と面会交流は別々で、面会交流が拒否されたからといって、支払い義務は免除されません。しかし、ある州では、監護親が面会交流させないと言う証拠がある場合に、非監護親は監護親への養育費の支払をキャンセルすることを許可しました。
日本でも、間接強制が認められれば、監護親は、養育費をもらったとしても間接強制としてお金を払わなければならず、財布は同じですから、結果的には同じような結果となります。

1,面会交流の裁判があった場合に、監護親がその裁判に従わず面会交流を認めなかった場合、非監護親は法定侮辱罪の救済を求めることができます。すなわち、罰金、拘留を求めることができます。さらに監護権者の変更や面会交流を確実にするための州の社会サービスなどを求めることができます。