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ネット遺言、「終活」サービス/見守り介護事業倒産について(2016.2.2更新)

2016.2.2  朝日新聞

公益財団法人「日本ライフ協会」(東京都港区)が1日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は約12億5千万円 負債は約2600人の会員全員が解約した場合にかかる預託金や会費の返還分計約11億円など。 同協会は集めた預託金約9億円のうち約2億7千万円を事務所開設費や人件費などに流用。ほかに約1億7千万円が回収不能になっているという。
(コメント:とうとう、危惧されていたことが現実となりました。老後破産の心配がないほど資産を持っていても、金で死後の安心は買えないことになります。しかし、それほど、死後のことまで心配する必要はありません。孤独死だろうとそうでなかろうと、どうせ、全員、着の身着のまま焼かれる身です。資産は、全部相続人の手に渡ります。相続人がいなかったら、国の手に渡ります。)

ネット遺言、「終活」サービスについて(2015.2.14更新)

平成27年2月13日付日経新聞
フェイスブックが、12日、利用者は、自分の死後に自分のページを管理してもらう「相続人」を指定でき、その相続人がそのページに遺言をアップしたり、葬儀の日取りをアップできたりする機能を導入した、とのこと。
コメント
日本のアプリをまねたんですかね?

 

平成27年2月4日付日経新聞には、「ネット終活サービス」が紹介されていました。

1,各運営会社によって仕組みは違います。
・遺族が火葬許可証を送付すると、指定した人にメールが送られ、その人が、あらかじめ頼まれていたファイルやデータを消去します。
・生存している通知をしないと、あらかじめ知らせていた継承者に安否確認をお願いし、死亡した証明書を送れば、あらかじめ記録した資産内容を継承者に送ります。
といった内容です。その他にも、あらかじめ消去したいファイルを登録しておき、亡くなったことが確認できるか、亡くなったことを知った人がファイル・データを消去するアプリもあるようです。

2,これらのアプリやサービスには、法的な遺言ではないので、法的効力はありません、との注意書きがしてあります。
これまであった「エンディングノート、終活ノート」のネット版みたいなものです。
最大の特徴は、パソコンやクラウドサービスに残している家族にもナイショにしておきたい写真やファイルを消去できることです。
遺言というのは、残された資産・遺産の処理をどうするか、といったことが主たる目的で、「消去する」というのはありません。引き取り手がない遺産は、遺産整理業者に任せることになります。クラウドサービスに残している写真とかは、パソコンを処分しても残っています。そこで、そのような写真データとかを消去するサービスが出てきたわけです。
これらの運営会社は、高齢者サービスの介護、死後の葬式、墓などのサービスと一緒になって売り上げ・利益を上げるわけです。

コメント
1,自分の人生やこれからのことを見つめ直す、流行の言葉で言えば、人生の可視化=見える化です。棚卸しです。何よりも気楽に始められて、完成しなくてもいいですし、ノートと違って書き直し自由で気が楽です。正式の遺言にしたいと思えば、作ったデータをもとに自筆証書遺言を作成することもできます。さらに、法的に確実にしたい場合は、公正証書遺言を作成することもできます。
もっとも、I Dやパスワードの管理を厳重にしないと危険なのは言うまでもありません。

2,パソコンの利用は、暗い映画館で映画を観ると同じように、自分1人の世界という面があります。そこで、家族には知られたくない自分好みの世界に浸るわけです。それで、死んだ後にも知られたくないという思いがあります。
かって、天皇機関説で有名な美濃部達吉という憲法学者がいました。亡くなった後、弟子の方が蔵書を整理していたところ、多分漫画だったと思いますが、見つけて「先生が、こんなものを読まれるのか。」と書いていました。このような場合に、ファイルデータを消去したいという人にはぴったりです。関連アプリとして「僕が死んだら」が無料で提供されています。

3,葬式に関するサービスを利用する場合は、あらかじめ消費生活サービスのトラブル相談を見ていた方がいいでしょう。
「価格やサービス内容について十分な説明がない」「質素な葬儀を希望したのに高額な料金を請求された」などの相談が寄せられているようです。
この場合は、サービスを申し込んだのが、亡くなった被相続人である場合がほとんどでしょう。そうすると、相続人との間でトラブルが発生する可能性があります。相続人にしてみれば、「死人に口無し」で、業者が言う通りに亡くなった被相続人が申し込んでいたかどうか、申し込んだ際、契約の内容がどのように説明されていたのか、サービスの利用規約内容で、申込者に不利な事項が明確に告知されていたのか等が問題になりそうです。

4、先日、平成26年12月11日、最高裁判所が、携帯電話の9,975円という解約金条項を有効としました。
最近、 IT関係のサービスでは、当初無料で、数ヵ月後にそれなりの利用料金となったり、解約するとそれなりの解約金が発生するサービスがあります。しかも、広告には、解約金についてほとんど触れていません。そして、申し込む際には、「利用規約を読んで同意」ボタンをクリックします。この利用規約に、解約金条項があるわけです。
金額にもよりますが、あまりにも高額だと、消費者契約法9条にあたる場合もあるのではないか、と思われます。そういうトラブルにならないように、利用規約はしっかりと読んで理解しておきましょう。

5、平成26年8月の経済産業省の電子商取引及び情報財取引等に関する準則では、

「サイト利用規約が利用者とサイト運営者の間の契約に組み入れられていると認定できる場合でも、消費者契約法第8条、第9条などの強行法規に抵触する場合には、その限度でサイト利用規約の効力が否定される。
また、具体的な法規に違反しないとしても、サイト利用規約中の利用者の利益を不当に害する条項については、普通取引約款の内容の規制についての判例理論や消費者契約法が消費者の利益を一方的に害する条項を無効としている趣旨等にかんがみ無効とされる可能性がある。」

としています。

6、また、サービスの委任契約は、 本来、委任者が死亡した場合は終了します (民法635条)。しかし、委任者が、死亡後も契約を終了させない旨の合意をしていた場合は、終了しないとの高等裁判所の判例があります(東京高等裁判所 平成21年12月21日、高松高裁 平成22年8月30日)。

7,高齢になり、会社を定年退職して、同僚との付き合いもなくなり、親しい友人も亡くなり、家族も遠い東京に住んでいるというような場合は、エンディングノートにいろいろ書き記しても、それを読んで受け止めてくれる人がいない場合もあるでしょう。以前、フランス映画だったか、実業界でバリバリ儲けているビジネスマンが主人公で、「あなたが死んだとき、涙を流してくれる人がいるのか、いない場合は、そういう人を見つけられるのか。」と言われて、自分の死に対して涙を流してくれる人を探す、というようなテーマの映画がありました。これは、なかなか難しいです。

また、東日本大震災のような震災があると、終活なんてまったく何にもなりません。運命には逆らえません。いつ、どこで、どのように死ぬかは、神のみぞ知る、です。

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