不平等条約たる五カ国条約と日米地位協定の比較ー激動の幕末・明治を生きた日本人群像・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(4-22-65-2)
第4編 開国の初期
第22巻 条約頒布 公武合体の起こり
第65章 五カ国条約頒布(安政6年 1859年 46才)
不平等条約たる五カ国条約と日米地位協定の比較
1, 幕府は、前年、米露蘭英仏の5カ国と条約を締結した。外国に領事裁判権を認め、外国人犯罪に日本の法律や裁判が適用されず(治外法権)、不平等条約といわれるものです。
それについて、久米は、以下のように書いています。
・英国は、公使アールコックを遣わし、 6月15日、将軍批准の条約を受け取った。
英米両国は、神奈川港に、商館の建設を始めた。これが横浜港の始まりである。
久米は、五カ国条約の中で英国の条約を紹介する。
まず、前文は、「帝国大日本大君」と「大ブリタニアおよびアイスランドの女王」と、永く親睦の意を堅くし、かつその各臣民貿易の交通を容易にせんことを欲して、この平和懇親および貿易の条約に及ばんことを決し・・・以下の条約を合議決定した。(コメント:条約を締結したのは、大君=将軍であって、天皇ではない。)
裁判権に関する条項は、
第4条、日本に在留するブリタニア臣民の間に起こる争いは、ブリタニア判事が裁判する。
第5条、ブリタニア臣民に悪事をなした日本人は、日本の判事が糺し、日本の法度で処罰する。
日本人あるいは外国の臣民に対し、悪事をなしたブリタニア臣民は、領事によって糺し、ブリタニアの法度で処罰する。裁判は双方において偏頗(不公平)があってはいけない。
2, 現在、在米の軍属による殺人事件が起きて、日米地位協定が問題となっています。
日米地位協定の第十七条
この条の規定に従うことを条件として、
(a) 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。
(b) 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によつて罰することができるものについて、裁判権を有する。
外務省のHPによると
日米地位協定における軍属に対する裁判権の行使に関する運用についての新たな枠組みの合意として(平成23年11月24日)
「日米地位協定の下では,米軍人・軍属の公務中の犯罪については,米側が第一次裁判権を持っています。公務中に犯罪を犯した軍属に対する裁判権の行使については,日米地位協定の適切な実施という観点から日米間で協議を行ってきました。
この結果,11月23日(水曜日),日米合同委員会において新たな枠組みが合意されました。この枠組みは,公務中の軍属による犯罪について,事案により,米側による裁判又は日本側による裁判のいずれかにより適切に対応するためのものです。この枠組みの概要は,次のとおりです。
(1)米側は,公務中に犯罪を犯した軍属を刑事訴追するか否かを決定し,日本側に通告する。
(2)米側が当該軍属を刑事訴追しない場合,日本政府は,その通告から30日以内に,米国政府に対し,日本側による裁判権の行使に同意を与えるよう要請することができる。
(3)米国政府は,
(ア)犯罪が,死亡,生命を脅かす傷害又は永続的な障害を引き起こした場合には,当該要請に好意的考慮を払う。
(イ)それ以外の犯罪の場合には,当該要請に関して日本政府から提示された特別な見解を十分に考慮する。
(4)この枠組みは,今後の事件(ただし、2011年1月12日の沖縄市での交通死亡事故を含む。)に適用される。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/11/1124_05.html
(コメント:アメリカの意向次第ということになります。)
そのほかの合議事項としては
日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員または軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。
(コメント:アメリカ軍属の犯罪が多く、被害を受ける沖縄の人たちには、納得できないでしょう。)
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