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会社が破産し、保証人の取締役が保証債務を弁済した場合、消滅時効を援用できるでしょうか?

会社が破産し、保証人の取締役が保証債務を弁済した場合、消滅時効を援用できるでしょうか?

会社が破産し、保証人の取締役が保証債務を弁済した場合、消滅時効を援用できるでしょうか?
保証・時効

保証・時効

会社が破産し、保証していた取締役が保証債務を弁済しつづけた場合、5年の商事消滅時効を援用できるでしょうか?

基本的にできます。

事案の内容
信用組合が、昭和51年6月19日、 A株式会社に、約7,200万円を貸付けました。
取締役Yは、その債務を連帯保証しました。
Yは、昭和52年8月から平成元年12月まで連帯保証債務を支払い、総額は約4,400万円に及びました。
その間、A株式会社は、昭和56年5月に破産宣告を受け、昭和57年7月に破産手続きは終了しました。
それから5年後の昭和62年7月9日には商事時効5年の期間が経過しました。
信用組合が、Y取締役に対し、残りの債権約3,000万円の支払いを求めて、提訴しました。
Yは、主たる債務の消滅時効を援用しました。
信用組合は、YはA株式会社の取締役として弁済したもので、債務の承認にあたり消滅時効は中断した、と主張しました。

東京高裁の判示
1,保証人が、主たる債務を承認しても、主たる債務について時効中断の効力を生じない。
2,保証人が、時効完成前に保証債務を履行しても、時効の援用は制限されない。
3,保証人が、時効完成後に保証債務を履行しても、主たる債務の時効を援用する権利を失わない。

最高裁は、平成7年9月8日、上記東京高裁の判決を是認しました。

ただし、最高裁は、平成25年9月13日、主たる債務者がA個人商人で、その子供Yが連帯保証し、その後A商人が亡くなり、Yが相続し、連帯保証債務を弁済した場合、Yは、主たる債務者兼保証人の地位にあり、保証債務の弁済であっても、債権者に対しては、主たる債務の承認を表示したことになる、という理由で、消滅時効は中断している、としました。

コメント
本件で、保証人はがんばって支払っていると思いますが、何せ元本が大きいため、途中で支払いきれなくなったのでしょう。本当に、井原西鶴も言っているように、請判(保証)の判は押すものではありません。
ただ、会社が銀行から融資を受ける場合、必ず、代表者保証を求められます。「嫌だ」といえば、「代表者が保証もできないなんて」ということで、融資はなされません。株式会社という「有限責任」という形態を取りながら、実態は無限責任社会で、会社の借金から代表者は逃げられません。逃げるためには破産しかありません。
ただ、消滅時効という制度を頭の隅に置いとくと救われる場合もあるかもしれません。
上記のようなことになるのは、主たる債務があってこその保証だからです。主たる債務が消滅時効にかかれば、保証人としても「主たる債務は時効消滅している」といえるということです。
きわめて大雑把にいえば、「親亀がこければ(消滅時効にかかれば)、子亀もこける(時効消滅といえる)」ということでしょうか。

事案によって、結論が異なることもあります。具体的事案については弁護士にご相談ください。

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