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儒者古賀穀堂の佐賀藩政の改革建白書 1ー鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(2-6-17-2)

儒者古賀穀堂の佐賀藩政の改革建白書 1ー再建の殿様・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(2-6-17-2)

第2編 公の初政治

第6巻 公入部(家督相続)の新政治

第17章 藩政拡張の初歩

・儒者古賀穀堂の藩政改革建白書 1(救急封事:封をした意見書)

1,肝要なことは、確実な人材を抜擢するにある。文武の心がけが厚く、古今に通じて大理を明らかにし、よこしまでへつらう者に迷わないことである。聡明さに欠け、的確な判断ができず、世論に左右される人は差し障る。

1,当藩の悪しき風習は、遊惰と奢侈である。これを改めるのは、勤勉倹約しかない。肥沃な土地の民は遊惰というが、衣服も心易くできるため、ぶらぶらして奮発心少なく、いつも飲食に奢り、客あれば肴など数限りなく、珍味美食は誠に過分である。他藩の者で食い意地の張った者は、佐賀の地を離れないとのうわさもある。それ位のために人から借金をして返済せず、家計貧困で蓄えもなく、武士の勤務もできず、嘆かわしい。

中には、自宅を宏大・きれいにして、分を越える者もある。衣服は華美ブランドもので、妻子を派手に人目に立つようにする者がある。たいてい、武具の備えの心がけなく、飲食の人と同じく、いやしくケチで金銭を蓄え、方便といって内々で商売のごとく金銭を融通し利息をむさぼる者もある。
10中の8・9は、飲食・衣服・住宅の欲のみで、勤倹の風はまるでない。下々に至っては、その日暮らしの者でも、寝酒、昼酒を飲んで昼寝し、賃仕事を頼んでも断る者も多い。これは他藩の者から見て、はなはだ驚き怪しむことである。

1,3つの病がある。嫉妬の風が甚だしい。決断の風が乏しい。負け惜しみの風がある。この病は、上下の中でも、高貴、役人に最も多い。
その原因を考えてみるに、不学なのに自己の才能を過信し、他人に利益になるようにとの気遣いなく、大理に暗く、ただ、今日一日限りの骨折りで何事でも済むように思い、己を修め・人を治める心がけがなく、中には、模範武士の手本を聞き覚え、天下のことはこれにて済むと考え、または「葉隠」1巻にて事足りるように考え、そのほか、槍・剣などの1小技を覚えて心境を試すなどといい、聖賢の道は外国のこと、いにしえのことで、今日、当藩では同じようにはゆかないとの下心がある。

 これに加えるに、無精の素質で勤勉苦労を嫌い、四書だけでも修めることができず、武芸は一事一芸にて足りると考え、兵術・武道にいたって疎く、鍋島藩の初めての戦争もしっかり覚えぬまま一生を送る者は、10人のうち、8・9人で、誠に浅ましき限りである。中興の事業ができかねるのも、またもっともである。

 このような悪しき慣習のため、豪傑・才子の武士があったとしても抜擢できない。あまつさえ、自分の負け惜しみで、遂には嫉妬するようになり、心から腹を割って、他人が考えるところを聞き、己の非を改め、十分に探求・討論することができない。ただ、他人の気(評価・目)をうかがって、すこしでもはばかるようなことには触れぬようにと心がけ、いわば、「上手」のやり方で接し、友人に対しても用心して心の底を打ち明けず、いわんや上司に対して、直言・いさめなどは思いもよらぬことである。

 このようでは、英邁の下にあっても、部下から美を進めることはできず、聖賢・英傑の治国手段は夢にも知らず、ありがたき教えといえども耳目になれないため、はなはだ異様に思いかつ疑いかつ嫌い、いろんな差し障りを述べて、先例にはありません、他藩のことを用いるのは難しいと、世論や評判に引きずられて、全員一致で、遂に中止となることが多い。この慣習を変えなければ、決して大業は成し遂げることはできない。

 これを急に変えることは難しく、格別の人物を抜擢して、次第次第に変えるべきである。
目下は、英断を徐々に用い、藩の急務、悪しき慣習の改善などは、臣下が聞くに喜ばなくとも、ご趣旨のことは、重職・幹部に仰せられ、部下の考えをあくまで言わせて、議論すべきである。万一、偏った見解に固まり、道理に逆らう見解がある場合は、ご意見があってしかるべきである。これは、上下の身分があって納得させるようにすべきである。単に遠慮して、部下の機嫌に障らぬようにとの心遣いは有り難きことながら、いわゆる婦女・姑息の仁で英雄のなすところではない。
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(2に続く)

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