外国人は日本で相続放棄できますか?
日本人の場合は、民法938条により、家庭裁判所に、「相続を放棄します。」と言う申立てをします。家事事件手続法201条5号に規定があります。
外国人の場合はどうか。いろんな考え方がありますが、裁判所としては、認めようという姿勢が強いです。
例えば、被相続人の最後の住所は日本にあり、相続債務が日本にあるというような場合、日本の家庭裁判所は管轄権を有するとして受理しています(東京家庭裁判所審判昭和52年7月19日) 。
被相続人の本国に管轄があるとした場合は、相続人は放棄するためにその国に出向かなければなりません。極めて不便だからです。
適用する法律は、被相続人の本国法によります(通則法36条) 。仮に、本国法が相続放棄を認めないような場合は、日本の公序良俗に反するということで 、通則法42条を適用して認めることになるかと思われます。
なお、英米法系の国では、遺産管理人主義をとっており、相続債務を相続人は相続しないため、相続放棄の申述は認められません。却下となると思われます。
放棄の方式は、通則法10条により、相続放棄の効力を定める被相続人の本国法か、行為地法である日本法かによります。結局、日本のやり方で良いということになります。ただ債権者などの関係者が本国にいる場合は、本国においても放棄の手続きをしておいた方が良いでしょう。
先例
北朝鮮が本国である被相続人の限定承認につき、北朝鮮の法律が不明であるとして、条理により限定承認を受け付けた先例として、昭和35年9月14日神戸家庭裁判所審判があります。
被相続人がインド人であった場合。
インドの場合は、その帰属する宗教により複数の法律があり、日本の教会で結婚式を挙げた場合、特別婚姻法という法律を適用して、最終的に日本民法により相続放棄を受け付けたものとして平成6年7月27日神戸家庭裁判所審判があります。
いずれにしても、特殊な事例で、各案件ごとに調査が必要ですから、弁護士にご相談ください。
民法
第938条(相続の放棄の方式)
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。