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銀行の相殺が認められなかった例(1)ー委託を受けないでした保証求償権ーH24.5.28

銀行の相殺が認められなかった例(1)ー委託を受けないでした保証求償権ーH24.5.28

破産者に対して債務を負担する者が、破産者の委託を受けないで、破産者の債務を保証する保証契約を締結し、破産手続開始後に弁済をして求償権を取得した場合、この求償権を自働債権として相殺することはできますか?

最高裁平成24年5月28日判決は、相殺できないとしました。

現在、次のような保証ビジネスが行われているようです。
取引債権者が、債務者の関与なしに 、債務者の取引金融機関に対して、保証料を支払って保証してもらう。
同様の仕組みは、海外取引で、貿易保険といわれる取引信用保険がカバーしています。
こうなると、保証と保険の 区別が曖昧となります。債務不履行を偶然の保険事故と見るというのも素直に理解できませんが、貿易保険は現実にそれなりの機能を果たしています。

事案の経過は 次の通りです。
・破産会社は、取引銀行に対して当座預金債権を持っていた。
・破産会社の取引先は、破産会社に対して売掛債権を持っていた。
・銀行は、破産会社の委託を受けずに、取引先に対する買掛債務につき、取引先から保証料を受け取って保証した。
・破産会社は、破産手続き開始決定を受けた。
・銀行は、取引先に対して保証債務を履行し、求償権を取得した。
・銀行は、求償権と破産会社の当座預金債権とを対当額で相殺し、破産管財人の当座預金払い戻し請求に応じなかった。
・そこで、破産管財人は銀行に対して相殺前の当座預金債権の支払いを求めて、提訴した。

大阪地裁と大阪高裁は銀行の相殺を認めた。

しかし、最高裁は、次のように述べて銀行の相殺を認めなかった。

・この場合、銀行の相殺を認めることは、破産者の意思や法定の原因とは 無関係に破産手続において優先的に取り扱われる債権が作出されることを認めるに等しい。
・この場合に銀行の相殺に対する期待を、委託を受けて保証契約を締結した場合と同様に解することは困難。
・銀行のする相殺は、破産手続き開始後に、破産者の意思に基づくことなく破産手続き上破産債権を行使する者が入れ替わった結果、相殺適状が生ずる点において、破産者対して債務を負担する者が、破産手続開始後に他人の債権を譲り受けて相殺適状を作り出した上、同債権を自働債権としてする相殺に類似し、債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続き上許容しがたい。破産法72条1項1号が禁ずる相殺と異なるところはなく、同号の類推適用により許されない。

コメント
このような相殺が認められることになると、取引債権者は、破産者の知らないところで、間接的にせよ、破産者の預金債権を担保に設定し、別除権を作り出すことができるようになります。
銀行としては、預金支払債務を破産者に支払わず、取引債権者から保証料をもらってその債務額と同額の保証契約を締結し、その破産債権者に保証債務を支払い、取得した求償権で相殺するということになります。これは、預金債務を受働債権とする相殺期待権を元手に、保証料を稼ぐ取引を認めることになります。そのような取引は法的保護に値するでしょうか?

以上は、私の個人的な理解と意見で、具体的な事案については弁護士に相談してください。(2014.10.14)

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