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悲しき子の奪い合いーある未成年者誘拐刑事事件( 最高裁平成18年10月12日)

悲しき子の奪い合いーある未成年者誘拐刑事事件( 最高裁平成18年10月12日)

・悲しき子の奪い合いーある未成年者誘拐刑事事件( 最高裁平成18年10月12日)

事案の概要(ブログ主が要約しています。)
・被告人両名A・Bは、被害者Dの祖父母にあたる。被告人祖父は栃木県で土木建築業を経営している。
・被害者Dは、被告人両名の娘Cの当時3歳4月の長女にあたる。
・祖父Aは、会社の従業員の息子が、消費者金融から借り入れていたので、 2回にわたって援助して面倒を見ていた。
・被告人両名の娘Cは、離婚問題が起きて実家に戻っている時、その従業員の息子と交際をしていた。

・ 娘Cは、被告人両名の了解を得ず、従業員の息子と同居するため栃木県から札幌市内のマンションに、被害者Dである長女と3歳年下の長男を連れて転居した。
・それを知った被告人両名は、翌日、札幌のマンションに赴き、娘Cと口論となり、その際、被告人祖父Aが相手の男性を殴った。
・翌日、被告人両名が被害者Dを実家に連れて行ったことから未成年者誘拐罪として起訴された。

・被告人祖父は、娘Cの相手男性が、消費者金融から借金していた不行跡や娘Cが離婚手続き中なのに交際していたことから、不信感を抱き、被害者孫Dが虐待されるんではないかと心配していた。
・また、被害者孫Dを連れて帰れば、娘Cが実家に戻ってくるのではないか、と楽観視していた。
・他方、娘Cは、被害者Dの引き渡しを求める手段として、当初から人身保護請求や刑事告訴を行った。
・被告人祖母が被害者Dに母親Cのもとに行く様に話したら、Dは精神的に不安定となり、不安神経症の診断を受ける状態となった。その後、被告人両名はDを娘Cの居宅で引き離すことを約束したが、娘Cの代理人弁護士はDの引き渡しを求める仮処分の執行を行った。しかし、孫Dが拒否したため、その執行が困難となった。

以上の事実の下、
札幌高等裁判所は、被告人両名の孫Dを引き渡す意思を疑い、「目的のためには手段を選ばない身勝手な動機による犯行であるとして」、懲役10ヶ月の実刑にした。

最高裁判所は、「 そもそも,本件は,未成年者誘拐罪につきその祖父母が告訴された事案であり,再婚相手をめぐる意見の対立に由来する親族間の紛争であるところ,
本来,このような紛争は,家庭裁判所の調停手続や当事者間の話合いなどにより解決を図るのが相当であり,
刑事裁判になった場合でも,刑の量定に当たっては,継続的な関係にある親子間の紛争という事案の性質に照らし,
被害者Dである未成年者の福祉を踏まえつつ,将来的な解決の道筋なども勘案しながら,
刑事司法が介入すべき範囲,程度につき慎重に検討する必要がある
というべきである。

さらに,本件犯行は,暴力がきっかけになったとはいえ,これを利用した計画的犯行ではなく,祖父母が,幼児を直前まで平穏に生活していた住居に連れ戻した点に照らせば,その安全を脅かすものともいえない。
被告人両名は,祖父母としてDを愛情をもって養育している上,
被告人Aに・・前科前歴もなく,土木建築業を営み平穏かつ健全に社会生活を営んでいる。
被告人両名が服役した場合,・・・・親族間の対立相克を深刻なものとし,Dの福祉やCの利益にも反する結果を生ずるおそれも否定できない。

犯行後にDとCらが長きにわたり離隔された状態が続いていることは問題であるものの,
前述のとおり,その経緯には酌むべき点がないとはいえず,
しかも,原審の段階では,被告人両名がDを引き渡す意思を表明していて,その真意を疑うべき合理的理由もなく,引渡しの実現のためにはCを含む関係者の協力が必要と認められる状況があったのであるから,
違法状態の解消を性急に求めるのではなく,現実的な解決の道筋をも踏まえた判断が必要であった
というべきである。

6 以上によれば,Dの引渡しが実現しない以上被告人両名共に実刑を免れないとした原判決は,
動機の評価を誤り,被告人両名の原審段階における姿勢を必ずしも正当に評価せず,
事案の性質や実情に照らして不当な結論を導いたものというべきであり,
その量刑は,甚だしく重きに過ぎ,これを破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。
よって,・・・,原判決及び第1審判決を破棄し・・・被告人両名をそれぞれ懲役10月に処し,・・この裁判確定の日から3年間それぞれの刑の執行を猶予する。」

コメント
・この事件は、近松門左衛門の浄瑠璃の世界を思い起こさせます。義理と人情の代わりに法律と人情の相克です。
・「子の福祉」といっても、札幌高等裁判所の裁判官と最高裁判所の裁判官ではかなり違います。
札幌高等裁判所の裁判官と同じように、やや誇張して言えば、杓子定規に結論を出す裁判官は、それなりに多いのではないでしょうか。それとも、高裁裁判官は、被告人両名が裁判所の命令に従わなかったことで、腹に据えかねたんでしょうか。
娘は、離婚の際も被告人両名の実家に帰ってきているという親子関係にあるのに、その両親を告訴するとは、子から親子の縁を切ったということでしょうか。
・最高裁の裁判官の方が「親子の情」というものに重きを置いて結論を出しているように思えます。
娘の代理人弁護士が、当初から娘の両親に対して刑事告訴する法的手段を取った事は、家事事件の方法としては適当ではなかったでしょう。それとも、娘から強く求められたのでしょうか。
家庭が崩壊しつつある現在、似たような事件はまたあるかもしれません。

・平成27年3月現在、大塚家具店の父と娘の委任状争奪戦が、マスコミに話題となっています。会社法の事件というより実質的には家事事件です。この事件を見て、事業承継を思いとどまった親もいるかもしれません。一旦、子供に事業を承継させたら、子供は親の言うことを聞かないということもあり得ることが改めて証明されました。マスコミによれば、大塚家具店の父親は娘を溺愛していたということです。

・もうひとつ、川崎市中学1年生が被害者となった殺人事件。これも痛ましい事件です。これまた、テレビで放送されていた内容では、両親が離婚して、母親が親権者になり、島根から川崎に引越してきてからの事件です。

 

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