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日本に住んでいる外国人配偶者が亡くなった場合、相続はどうなるのでしょう?

日本人と外国人夫婦とその間の子供がいる家庭で、日本に住んでいる外国人配偶者が亡くなった場合の相続はどうなるのでしょうか。

1,まず、外国人の本国の裁判所でやるのか、日本の裁判所でやるのかという裁判管轄の問題があります。 この問題については、平成23年5月に、改正民事訴訟法が公布されました。

民事訴訟法 第三条の三 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。
十二 「相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え」について
「相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には、
被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)」

ということで、日本にいる外国人の場合は、日本の裁判所で受け付けてもらえることになります。

2,次に、相続については、外国人の本国法が適用されるのか日本民法が適用されるのかの問題があります。
これについては、「法の適用に関する通則法」36条に「被相続人の本国法による」とありますから、外国人の本国法になります。
ただし、その外国人が、中国、韓国、台湾、フィリピン、アメリカや欧米諸国の場合は、その国の法律が翻訳され、容易に入手できる場合もあります。またそれらの国についての解説書や判例もある場合もあります。

しかし、そうでない東南アジア諸国の場合、例えばインドとかミャンマーとかは、その外国人が信仰する宗教によって相続問題が決まります。イスラム教徒の場合はイスラム教によって、仏教徒の場合は仏教、キリスト教の場合はキリスト教によって決められます。イスラム教といっても、色んな宗派があり、各国で内容が異なります。
そうなると、各宗教の相続に関する規定を調査することも大変です。 専門の学者は原典にあたって確認すべきであるとしています。
しかし、ミャンマー語やベトナム語等の原典を見ても、弁護士・裁判官は、少数言語の語学能力がないために確認できません。翻訳を頼むにしても法律用語の翻訳については信用性に問題があります。

3,  また、英米法系の国々では、被相続人の権利義務は、死者の人格代表者である遺産管理人に帰属し、 遺産管理人は財産を管理し、プラスの財産のみが相続人に分配されます。日本みたいに、「親の借金は子供が払え」という事はありません。借金は相続されないのです。ただし、この遺産管理人は、英米法による権限があるのに対し、日本の相続財産管理人は、日本の法律で定められた権限しかなく、必ずしも一致しません。

4,  また、本国法が、土地について個人の所有を認めていない国もあります。 そういう事件があれば、裁判所と相談して進めることになるでしょう。
さらに問題となるのは、裁判管轄が日本の裁判所にあるといっても、外国人がその本国に土地を所有していた場合、日本の遺産分割の調停調書によって、日本の相続人にスムーズに移転できるかどうかは疑問です。理屈で、日本の裁判所に 管轄があると言っても 、その外国人の本国当局が、それを認めるかどうかは判りません。タイやミャンマーでは、外国人に土地の所有を認めていません。相続人といっても、その本国から見たら外国人です。結局、その財産が所在する国の当局や弁護士に相談して進めることになるでしょう。

5,資産がある人は、資産の分散投資ということで、円安の日本に資産をおいていては 目減りするということで、海外に資産を移動します。しかし、海外に資産を移動していた場合、亡くなると相続の問題で苦労するでしょう。そもそも、相続人が、亡くなった被相続人の海外投資の資産の内容がわからない場合は困ります。日本国内であれば、弁護士も大体の目星をつけて調査して判明することもあります。これが海外の資産となると極めて困難でしょう。

 

6, 中国で日本人がなくなった場合の相続関係について、劉手耶弁護士のブログ

(http://blog.sina.com.cn/s/blog_78b4c7390101ar2d.html)を参照してください。

以上は、私の個人的見解であり、具体的事案については弁護士にご相談ください。(2014.11.23)