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面会交流の際に言われる「子の意思」とは監護親の意思か?2つの先例

面会交流の際に言われる「子の意思」とは監護親の意思か?2つの先例

面会交流の際、言われる「子の意思」とは?2つの先例

平成23年5月に公布された家事事件手続法の65条では、「家庭裁判所は、親子、親権・・に関する家事審判・・の手続きにおいては、子の陳述の聴取、調査官による調査・・により、子の意思を把握するように努め、審判をするにあたり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。」と定めています。

1,「子の意思」を子供の説明通りに受け取った事例

以下は棚瀬孝雄教授の「両親の離婚と子どもの最善の利益」(自由と正義2009年12月号)によります。この中で、 1つの例(平成10年頃のケース研究の事例)を紹介されています。事案の内容は
「連日朝帰りで、生活費も遊興費につぎ込む夫に、懲らしめの意味で置き手紙をして実家に帰ったところ、夫が迎えに来ると思ったのにこず.離婚だと言われた。それで父が2人の子供(5歳と2歳半)を引き取っている。

母親による親権者指定および面会交流の調停で、別居後1年後の調査官の調査報告書
「日常生活に関してはハキハキと答え、人懐っこくおしゃべりな印象を受けた。だが、部屋で子供だけになり、母親のことを話題にすると、急に小声になり、言葉少なに、「僕、ママが来ると吐いちゃうんだ」「ママは起きてから寝るまでガミガミ叱ってばかりいた」など、ぽつりぽつり語った。母親と会うことも「前の晩眠れないし、ママはあちこち引っ張り回すから嫌だ」という」

その2年後、2回目の調査報告書(子供は小学2年生)
「学校には喜んで通っており、通知表の成績も良い。健康状態も良好だ。」「母親の事は、家で『あいつ』とか、『あのバカ』と呼んでいる。訴訟資料の中で、言ってもいないことを書いたりしたので不信感も強い」「父親が、子に本件のことをいい、『会いたかったら、会ってもいいぞ』と言っても、子供は頑として首を縦に振らなかった」「母親については、「先日運動会を見にきたが、太っていた。自分の後をついてきたのでむかついた。学校に来られると嫌だ。」と顔をしかめた。「目立つし、手を振ったり、うろちょろするのでみっともない。友達にも『お母さんだぞ』と言われるから。」という」

結論として、調査官は、「強固に「母親と会いたくない」と意思表示をしている現状では、面接交渉の実施は非常に難しいと言える。父親らが面接交渉を受け入れる気持ちにでもならない限り、自らの意向を曲げないであろうし、無理に行ったとしても、相当の心理的負担を与えるに過ぎないであろう。」との結論

棚瀬教授は、子の面会忌避の頑固さについて、「子の意思」の実体が、実は子の意思ではなく、「面接交渉を拒否する父親」「つまり監護親の「親の意思」であることを物語っている。親の意思である元妻への否定が、監護家庭の中での子の支配を通じて、子の意思になる」と評価されています。

ブログ主も同感です。父親が、子供の前で、母親のことを「あいつ」「あのバカ」とか呼んでいる環境の中で、父親から「会いたかったら会ってもいいぞ」と言われ、子供が頭を縦に振らなかったからといって、それが子供の真意だと捉えること自体が、誤っています。

小学2年生の子どもが、自分の母親に対し、「うろちょろするのでみっともない」と言うのは異常です。母親が子供を虐待した事実は見受けられません。調査官は、それにもかかわらず、子供が、自分の母親に対して、このような評価をするのが、おかしいとは思わなかったのでしょうか。子供が発する言葉をそのまま受け取り、その言葉の内容が異常かどうか考えていません。これでは、真相に迫ることができません。

このケースでは、調査官は、 7歳の子供が自分の母親をみっともないと評価するのがおかしいと感じなければなりませんでした。そして、子供に対し、「以前は何と呼んでいたのか」、「どういった感じでいたのか」、「現在ではどうしてそのように言うのか」といった質問をすれば、もう少し異なる子供の気持ちが見えていたのではないかと思われます。残念なことです。

そもそも、この子供に対しては、「君のお母さんは、太っていて、うろちょろしてみっともないのかい」と問い、さらに「それじゃあ、バカで、太っていて、みっともないお母さんから生まれた君はどうなんだね」と問いかけられれば、答えにつまり、自ら悩むことになるのではないでしょうか。

そして、この報告書に基づき、この報告書の内容が、「子の意思」であり、面会交流を認めないことが「子の福祉」になるとした裁判官も、同様の評価を受けなければなりません。
推測で言わしてもらえば、裁判官の考えとしては、継続性の原則というか、現状で、子供はそれなりに成長して、ことさら取り上げるような問題がない以上、無理矢理、面会交流を認めて波風を立てる必要もない、といった深層心理があったのではないか、と思われます。

 棚瀬教授は、「子の意思が、監護親の強い影響で形成される場合、本来、親の「片親疎外」(Parental alienation)を疑い、その呪縛を解くようにしながら、強制的に合わせることが必要です。子供がそもそも親を忌避すること自体、不幸な事ですし、それがただ離婚の渦中で、親の葛藤を原因として生じているのなら、必ず、適切な面会支援をしながら、自然な親子交流ができるような頻度と方法で会わせれば関係は修復できますし、子供も、本心では、本当に喜ぶと思います。外国には、そのための無数の理論と実践があり、この面でも、日本の決定的な遅れを感じざるを得ません。」とされています。

 このような例が、全国の家庭裁判所で、どのくらいの割合であるのかはわかりません。しかし、先日の東京高等裁判所の決定例も同様です。東京高等裁判所と言う家庭裁判所の上級審であることからすれば、その影響力は極めて大きく、全国の家庭裁判所は指導的な決定としてこれに従う家庭裁判所は多いと思われます。結局、担当裁判官の家族観に左右されることになります。

2,「子の意思」を子供の説明通りに取らなかった事例

 大阪高等裁判所平成20年10月2日決定では、母親が7歳の長男と後妻の次男の監護者指定および引渡しを求めた事案で、父親は、長男は母親を嫌っており、長男次男とも父親と生活することを望んでいると主張したが、大阪高等裁判所は、「子供らの母親に対する感情は表面的なものであり、年齢から考えて子供らの意思を重視することは、かえってその福祉に反する」としました。事案の詳細はわかりません。

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