鍋島直正公伝の概要(3)ー直正公の資質と業績—鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(1-0-3)
直正公は、初代清久公の純血を受け継ぎ、歴代の君主の多くが非嫡出子であったのに比べ因幡藩から嫁に来た母親の嫡出であった。
その後20年にして、藩の財政も余裕が生じるようになると、これを直ちに国防の資金に当てて、惜しむところがなかった。そこで、世間の人は、初めて、直正公の初志を知って感嘆してやまなかった。
世の中に名君と言われる人も、いったん補佐する人を失うと、往々鈍くなってしま人が多く、また年を経ると安易に流れて、元の賢明の名を維持することむずかしく、末路は寂しく、評判も聞かないで終わってしまう人も少なくない。
直正公は自分には厳しく、他人には寛大で、公の藩政の間、浪人や切腹に処せられた藩士はなかった。これは水戸藩やその他の藩にその例が多かったのと大いに異なるところである。
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