再建の殿様・鍋島直正公伝(開国・維新史)を読む(1-9-3) ー侍(男)の出世・嫉妬・ねたみ
鍋島直正公伝第1編
目録
第1編 公の出生以前と幼時 第3巻 巍松(斉直)公の政治
第9章 文化の奢侈状態
侍(男)の出世・嫉妬・ねたみ
ある時、多久(多久市)の米倉権兵衛と石井五郎というものがいた。石井は、「捻五郎(ねじごろう)」と言われた硬骨の人で、米倉と同じ付役で、米倉の上席であり、米倉の人と「なり」をいやしんでいた。
米倉が、出世して相談役となり、石井にそのことを伝えた。すると、石井は、米倉の面前をはばからず、「そうであるか、貴公にては勤まらぬ、辞退せられよ。」と言った。
米倉は、これを聞いて、顔色を変え、「不肖ながら、公の御賢慮によりて、仰せつけられたる拙者である。それを勤まらぬとは何事ぞ。」と返した。