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長崎が、欧州の新知識獲得、国事策動の震源地となるー幕末・明治を生きた日本人群像・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(5-27-81)

長崎が、欧州の新知識獲得、国事策動の震源地となるー幕末・明治を生きた日本人群像・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(5-27-81)

長崎が、欧州の新知識獲得、国事策動の震源地となるー幕末・明治を生きた日本人群像・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(5-27-81)

第5編  公の国事周旋
第27巻 長州征伐公武合体
第81章 直正公 長崎に微行す(元治元年 1864年 51才)

長崎が、欧州の新知識獲得、国事策動の震源地となる

・攘夷を主張していた薩長は、外国船から砲撃を受けるや、たちまちに目が覚めて、欧州知識の輸入が急務であることを覚った。両藩ともに、学生を英国に留学させた。 薩摩の寺島宗則、五代友厚は、長崎から10人の留学生を英国に留学させた。
長州の高杉晋作は、長崎に出て、英米人から武器を買い入れ、隠密に英国とコネを作った。

・他方、フランスは、幕府の小栗上野介と謀り、横須賀に海軍造船所を建設し、陸軍をフランス式に改め、フランス語教習所を設立した。
フランスは横浜に、英国は長崎に伏線を敷きつつあった。

・佐賀藩は、長崎が外交の正門であるとの考えから、京都と江戸には、凡庸の人材を最低限おいて、長崎には優秀な人材を投入した。そのため、佐賀藩は、幕府の通訳を介さずして、英米人と交渉ができ、私貿易では、優先権を得た。

時に、イギリス人グラバーなる者は、わずかの資本で来日し、諸藩が攘夷熱が盛んな頃、武器・艦船の注文を受け、佐賀藩にも取り入り、巨万の富を蓄えた。
諸藩は、競って、英語を話す佐賀藩の石丸虎五郎にグラバーとの仲介を頼んだため、外国・国内諸藩の機密情報は、たちまち直正公の耳に入った。諸藩が、聾唖を利用して企てる陰謀も、いつしか直正公の知るところとなった。

また、佐賀藩は、廃れた旧式の鉄砲を長崎に送り、諸藩の新防備用として売却し、この資金で、新式鉄砲の購入費に充てるべく努めた。

 ・大隈重信らも、私貿易の機先を制して、商人に佐賀産物の輸出をさせ巨万の富を得させて、その一部の利益を書生の学費に充てさせた。ここに、政治・法律・その他科学の知識を得る道が開かれた。
大隈は、長州征伐で従軍していた副島次郎が、「万巻の書を読破しながら、一兵卒で倒れるのか。」と嘆くのを聞き、長崎の英語学校の主任に誘った。そこで、副島も、自ら英語を勉強しようと決心するに至った。刻苦勉励、夜半に至るまで勉強した。
また大隈らは、米国の宣教師フルベッキが、オランダ語・英語に通じていたため、これを教師として、蘭学から英語に転ずることができた。

フルベッキは、嬉野を訪れ、「実に世界にもまれな温泉である。ここに蒸気の浴槽を設けてホテル等の設備を備えれば、シンガポール、インドあたりに住んでいる外国人は、来日して入浴するはずで、必ず大繁盛する。肥前の富はこの温泉にある。」と激賞した。しかし、これを聞いた者はその是非を理解できなかった。

・すでに述べた伊東や大石良英は、その学力・治療は、ドイツ人に劣らずと言われた。

 ・直正公は、グラバー邸や英国艦船に招かれ、機会があれば、英国へ渡航し、女王にも謁見したし、と述べる。これを聞いた長州藩の武器購入担当者は、「肥前公は、油断、相成らず」と木戸孝允に書き送った。

  ・直正公は、学校教育にも努力した。道徳を重んずれば、保守的となるので、学生には、活動的に知識を発展させるように努めた。現に、幕府に請われて長州征伐に赴いた際、保守的な者は、機転が利かず、使い物にならなかった。保守的な考えでは、時代の変化の中で、機転の才を発することができない。

 ・長州は、高杉晋作の主張でもって、必死で破壊された山口城を修復し、幕府の命令を拒否し、挙藩一致、一寸の土地も失うべからず、と決心していた。そこで、将軍が自ら遠征すれば、長州藩は必ずや震えて服するだろうとの考えで、幕府は、将軍親征を決めた。

  ・この年、田中久重親子らが製造した小蒸気船が、日本で初めて、完成した。

(コメント:時代の変革時には、新しい知識を求める流れに身を置き、新知識を身につけるよう務める必要性がわかります。従来の知識では、これまで経験したことのない新しい環境や武器・生産手段等に対して対応できません。
時代の流れに遅れた者は、後塵を拝し、諸藩のように、先陣をゆく佐賀藩のお下がり武器を買い求めることになります。

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 ・時代の変革の新知識は、現在ではITの知識でしょうか。しかし、ITの中身は略字ばかりで、なかなか理解するのは難しいです。最大の難関は、経営者はITで何ができるかがよくわからず、 ITのプログラマーは、経営や事業のことがよくわからず、IT化はスムーズにできません。また、プログラミングに多額の費用がかかります。

 ・現在、日本の旅行業界は、外国人のインバウンドに躍起です。150年も前に、インバウンドの重要さを主張していた外国人がいたとは驚きです。残念ながら、当時は理解できなかったようです。
やはり、外国人が気に入るかどうかは、金を出して、外国人に体験してもらう必要があります。金をけちって、日本人だけで判断しても、外国人の受ける印象はわかりません。)

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