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面会交流を認めない監護者から他方親に監護権を変更した大阪高裁のH21.6.30決定

面会交流を認めない監護者から他方親に監護権を変更した大阪高裁のH21.6.30決定

親子

面会交流を認めない監護者から他方親に監護権を変更した大阪高裁のH21.6.30決定 を紹介します。

監護者である父親は、 4歳の女児について, 平成20年×月の別居以来, 母親との面会交流に一切応じなかった。

 家庭裁判所は, 父親の監護状況に問題はなく, 母親の監護状況が父親に比して優れているとはいえず, 未成年者にとって, 父親の実家が最もなじみの深い場所であることから, 監護状況を変更すべき必要があるとはいえないとして、母親の監護者指定および子の引き渡し申立てを却下した。

 しかし、大阪高等裁判所は、次のとおり述べて, 家庭裁判所の審判を取り消し, 母親の申立てを認容した。
「主たる監護者は母親である抗告人であり, その過去の監護に特段の問題はなく, 将来の監護についても充分な態勢が整えられている。
他方, 父親は現実に監護しているのであるが, その監護については. 父親の母の補助に依存している点が大きい以上には, 現状では特段問題はない。
しかしながら, 父親は, 母親と未成年者の面会交流を長期間認めてこなかったし, 今後もこれを認める見込みがない。
既に述べたように, 別居した父母であっても, 双方が子の養育に関わることは子の福祉にとって重要であり, 面会交流は, 子が非監護親から愛されていることを確認し, 非監護親と交流する機会として, 子の健全な成長にとって重要な意義があるもので, これを制限する事情がないのにこれを行わないのは子の福祉のために好ましくない事情といいうる。

本件においては,未成年者の年齢が4歳であって, 母親との面会交流は特に重要と考えられるが, 父親はこれを拒否しており, 記録によれば, 原審の家裁調査官が面接した際には母親に対する愛情を素直に表現することが多かったのに, その後の父親の監護養育の期間を経て, 当審の家裁調査官が未成年者に面接した際には, 母親に対する強い拒絶反応を示すに至っているが, これは子の福祉にとって憂慮すべきことである。このまま父親の監護を継続することは, 未成年者が未だ4歳という本来母性を必要とする年齢であるのに, 母親と未成年者との精神的な結びつきを一層希薄にする可能性が多大にあり, 未成年者に母親による愛を感じつつ成長する機会を奪うもので, その精神的成長に悪影響を与えかねないものである。

そうすると, 父親の監護を継続することは, 未成年者にとって好ましくない事情があるというべきであり, 他方, 母親は, 自らが監護する場合にも父親の面会交流を認める意向にあるし, 前記のとおりその監護態勢に問題はなく, 実親が直接的により多くの監護を行うことができるという意味で母親の方が父親より優れていること,また,監護する者を変更することについても, 未成年者が父親に監護されていた期間が短いこと, 従前は母親が主たる監護者であって未成年者も母親に親和性をもち, しばらく面会する機会がなかった以上にその親和性を害する事情はないこと, 年齢からみて環境の変化の影響も少ないといえることからすると, 未成年者の監護者として母親を指定し. 父親に未成年者を母親に引き渡すように命じることが, 未成年者の福祉に適うと認められる。

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