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コロナ版ローン減免制度ー条件・ハードルがあります

コロナ版ローン減免制度-コロナで借金が払えないからといって、あらゆる借金が無条件に減免されるわけではありません。

・ この制度のPRで、「特別定額給付金など財産の1部を手元に残せる。」、「ブラックリストに掲載されない。」などのメリットが大々的に宣伝されています。しかしながら、この制度を利用すれば、エスカレーターに乗ったように自動的に借金が消えてなくなるわけでありません。いろんな条件、ハードルがあります。これらのハードルは、細かいのであまりPRされていません。
この制度を利用する前に、ある程度、条件やハードルを知っておく必要があります。

・この制度は、破産のように法律の力によって、借金を帳消し・減免するものでありません。債権者の減免に応じるという同意のもとに、簡易裁判所の調停で解決するものです。したがって、債権者が減免に同意してくれなければ調停は成立せず、減免とはならないのです。債権者が、仕方がないと諦めて同意せざるを得ない事情を詳しく説明する必要があります。全債権者の同意が必要です。
債権者が仕方がないとあきらめるというのは、破産と同じく、当面の最低の生活をするための財産を残して、それ以外はすべて換価処分して債権者に配当するというのが基本です。

・まずこの減免の債権の種類は、銀行、クレジット会社、リース会社、貸金業者などの金融債権で、取引上のものは含まれません(ただし、 20万円以上の債権がある場合例外あり)。
ここは破産や民事再生とは違います。

・いろんな場面で、時期が問題となります。
減免してもらいたい債権について、いつの借金なのかが問題とされます。
コロナが蔓延し始めた2020年(令和2年) 2月1日(新型コロナウィルスが指定感染症として定められた日)以前の借金が減免の対象です。
その後、その年の10月30日までの間に、コロナ対策のために受けた緊急特別融資(「緊急かつ一時的な生活や事業の維持に必須」)も減免の対象となります。 それ以降の借金は、減免の対象とはなりません。実際、この制度を利用しようと思ってる人が借金をして、返済する段階になって「減免」と言ったら、詐欺に近いと言われるでしょう。したがって、減免の対象とはなりません。

・返済状況について
遅滞がないことが必要です。税金や国民保険料の滞納があれば基本的に利用できません。
この減免の対象となる人は、コロナが蔓延しだした2020年2月1日までは、まじめに返済して遅滞がなかったことが条件です。厳密には、銀行の取引約款に書いてある「期限の利益喪失事由」があれば利用できません。もともと、返済が滞っていた人は、「コロナによって返済できなくなった」とは言えないからです。コロナによって返済できなくなった人だけがこの制度を利用できるというわけです。もともと返済が滞っていて首が回らず支払い不能状態であれば、破産か民事再生手続きを利用するしかありません。

・現在、破産状態に近いことが必要です。
借金がたくさんあって支払不能であっても、夫婦合わせて年収730万円以上の収入があれば、支出を減らして払いなさいということで、この制度は利用できません。但し、夫婦共稼ぎといっても、奥さんがパートの場合は合算しません。

住宅ローンの返済が苦しいという場合の苦しさの物差しは、住宅ローンの年間返済合計額が年収の4割以上あれば、苦しいということでこの制度を利用できますが、それ以下だと利用できません。

・破産状態にあることを、収入、資産、経歴等を明らかにして、債権者に説明する必要があります。
そのために、債権者一覧表、財産目録、詳しい陳述書等を作成して、各債権者に説明し納得してもらわなければなりません。更に裏付けとなる収入の明細(源泉徴収票、課税証明書、確定申告書)、通帳写し、保険証券、保険解約返戻金、車検証、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、返済予定表などの証拠を揃えて、各債権者に見てもらい納得してもらわなければなりません。

・この制度を利用する場合の締め切り=時間的制約も大事です。
債務整理の申し出をした場合、 3ヵ月以内に、簡易裁判所での調停案の草案を提出しなければなりません。更に債務整理申し出をしてから6ヶ月以内に特定調停を申し立てなければなりません。
分割弁済の調停案の場合、その弁済期間は5年間です。

・金融機関の同意をもらう調停条項は、破産や民事再生手続きの配当額以上でなければなりません。