外国人と離婚したいがどうするか?
1,まずどこの裁判所で離婚の手続きをやるか(裁判管轄)が問題となります。
原則としては被告の住所地です。したがって、夫婦ともに日本にいる場合には、日本の裁判所に離婚の申立てができます。 ただし、例外として、被告が日本にいなくても、原告が遺棄された場合、被告が行方不明の場合、その他これに準ずる場合には、例外的に原告住所地の日本にも裁判管轄が認められるとした判例があります(最高裁昭和39年3月25日) 。
ただこの事案は特殊です。この離婚の夫婦は、国籍では外国人同士です。ただ妻が元日本人で、結婚により韓国国籍となったものです。終戦後、夫の離婚の承諾を得て帰国し、 15年以上経過していました。そこで、原告が住んでいた高松地裁丸亀支部に、韓国親族相続法の離婚原因に該当するとして離婚の訴えを起こしたものでした。一審は却下。 二審は控訴棄却。そして、最高裁は上記の通り判決しました。なお、夫は来日したことがないので、旧人事訴訟法第1条3項の「管轄裁判所が定まらざる時」にあたるとして最高裁判所規則ににより、東京都千代田区が被告の住所とみなされ、本件は東京地方裁判所の管轄に専属するので、高裁の判決を破棄し、第1審判決を取り消し、東京地方裁判所に移送したものです。
2、もう1つの平成8年 6月24日最高裁判決も特殊です。日本人夫とドイツ人妻が、西ベルリンに住んでいたが、平成元年、日本人夫は長女を連れて日本に帰国した。ドイツ人妻は、離婚と親権を求める訴えを西ベルリンの裁判所におこし、公示送達によりドイツ人妻の離婚請求が認められた。他方、 日本人夫も、同じ頃浦和地方裁判所越谷支部に離婚の訴えを提起した。この場合は、「逃げ帰り離婚」にあたるようです。(日本がハーグ条約に加盟した現在(2014.11現在)では、このような場合、ドイツにいる妻から子供をドイツに戻せ、との請求があるかもしれません。)
この場合、西ドイツの裁判所の判決は、公示送達によるため、日本での効力はありません。他方、日本人夫が、西ドイツで離婚の裁判を起こそうとしても、既に判決が下されていることから却下になります。日本人夫のほうは、裁判を起こそうにも起こすことができないわけです。西ドイツでは離婚が成立し、日本では婚姻状態にある、ということになったわけです。そこで、日本での裁判管轄を認めたわけです。外国人との結婚はそれなりに手続きが大変ですが、離婚となるとさらに大変です。
3、 なお、相手に慰謝料を請求する際、相手の財産が外国にある場合は、外国で裁判をした方が良い場合もあります。
4,どの国の法律が適用になるのか、準拠法の問題 これについては、「法の適用に関する通則法」27条但し書きがあります。
第27条(離婚) 第二十五条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。
第25条(婚姻の効力) 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
したがって、日本民法によることになり、結局、日本人同士の離婚手続きと同じようになります。
5、方法としては、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の手続きをとることになります。 ただし、このようにして生じた離婚の効力が、外国人の本国法で通用するかどうかは、その外国人の本国法によります。
6、大連の劉手那弁護士のブログによれば (http://blog.sina.com.cn/s/blog_78b4c7390101i4pr.html) 、 日本で協議離婚をした場合、それを中国の日本大使館で認証手続きを踏めば、中国で効力が認められる。 裁判離婚をした場合は、中国の中級法院(裁判所)において「外国裁判所による離婚裁判の承認」を申請することによって、その効力が認められる。 とのことです。
但し、199 4年 11月5日、大連市中級人民法院は、「日本と中国との間には、相互に裁判所の判決、決定を承認・執行する国際条約を締結し、又は加盟していないし、相互の互恵関係も成立していない」として日本の裁判所の判決、差し押さえ、譲渡命令を却下する決定をしています。家事事件と取引事件との差異でしょうか。(2014.11.14)