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子の面会交流の連絡方法の変更等につき、福岡高裁は不法行為責任否定(H28.1.21補足)

下記の熊本地裁の控訴審・福岡高裁は、H28.1.20、原判決を破棄し、不法行為責任を否定し、男性の請求を棄却したとの新聞報道あり。
男性は、上告予定との報道。

熊本地裁が、H27.3.27, 子の面会交流の連絡方法の変更等につき、不法行為責任を認める。(H27.12.19補足)

熊本県の30代男性が、妻とその弁護士に対し、次男(2歳)との面会を拒否されたとして、損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は、弁護士が男性との連絡方法をメールから書面の郵送に変えて面会交流を意図的に遅延させ、男性からの協議の申し入れに速やかに回答しなかったことは、面会交流についての誠実協議義務の違反があるとして、妻とともに連帯して20万円を支払え、との判決。弁護士と妻は控訴する方針。

(H27.12.19 補足)公刊された判決によると
H24.11 被告(妻)が離婚調停申し立て。原告は弁護士に委任。
H25.4 調停成立
当事者双方は当分の間別居し、婚姻解消または同居するまで、
長男の監護者を原告(夫)、次男の監護者を被告(妻)と定める。
当事者双方は、被告が長男と、原告が次男と、それぞれ月2回程度(原則第2、第4土曜日)に面会交流することを認め、その具体的日時、場所、方法等については子の福祉を慎重に配慮して、当事者間で事前に協議して定める。

H25.4 面会交流の際、被告の父が、原告に監護されている長男に「守ってやれんでごめんな」と発言し、原告が抗議のメールを送った。
H25.5 家裁は、原告、ついで被告に、それぞれ、履行勧告を行った。
・・
H25.8、被告は、代理人弁護士を立てて、第2の離婚調停を申し立てた。
・・
H25.10~ 被告弁護士は、それまでメールでのやり取りに変えて、「意見の対立が見られるため、争点を明確化し、適格に解決すべく」書面で連絡した。
・・・
H25.12.10 原告が、本件訴えを提訴した。
H26.1.23 第2の調停期日で協議。
H26.2.1 面会交流が実施。

 以上の事実関係で、裁判所は、まず、「監護親は、子の福祉のため、非監護親と子が適切な方法による面会交流をすることができるように努力する義務があり、また、非監護親は子と面会交流する権利があることは明らかである。」とした。そして、

被告弁護士が、連絡方法を変更した上記理由について、「本件は時効中断や形成権の行使等の書面による証拠化が必要な事案でないし、感情的対立を防ぐため電話よりも書面郵送のほうが優れている部分もあるにせよ、メールによる連絡が可能であり、実際に9月までそのようにされていた本件において、あえて時間のかかる書面郵送を用いることにつき、合理的な理由は見当たらない。・・・10.21以降は書面による協議すら行った形跡すらないこと(履行勧告にも対応していない)をあわせ考慮すると、・・・被告弁護士の上記行為は、第2調停事件において調停期日が指定されるまで面会交流を行わない目的をもってする意図的な遅延行為であることが推認され、これを覆すに足りる客観的な証拠はない。

第2調停事件が係属した後であっても、本件調停が当然に失効するわけではなく、誠実協議義務が否定されるものではなく、特に6月以降は面会交流が途絶えており、面会交流の再開が求められている状況に照らし、被告弁護士は、速やかに面会交流が実施しできるようにするための誠実協議義務を負っていた。

 

コメント
相当の高葛藤の事件のようです。原告は本人訴訟で、被告側には弁護士がついているようです。
・最近、弁護士の広告では、「依頼者に寄り添う」「弁護士業は、サービス業」「依頼者のため全力を尽す。」とか言われることがあります。しかし、依頼者とは、距離を置いた客観的な立場で、バランスを考慮した対応が必要なのでしょう。強姦事件の被害者に対して被害取り下げを強要した弁護士も、起訴されました。
ただ、こんな距離を置いたような客観的な立場で対応しますというようでは、依頼する顧客はいないのが残念なところです。以前は、こういうさめた対応があるべき対応だったと思いますが。

・子供にとっては、両親が離婚した後も、ちゃんと子供に愛情を注いで、見守り育ててほしいということになります。
しかし、いがみ合って分かれた夫と妻は、子供が自分の意思で親の家に行くか行かないかを決めれるまでは、面会交流に付き合うことになります。顔も見たくない相手と数年から10年間顔を合わすことになります。何か工夫が必要でしょう。家庭問題情報センター(FPIC)というのもありますが、都市にしかなく、費用もかかります。離婚裁判までして分かれた夫婦間で、裁判所が、夫婦間で面会交流の詳細を話し合って決めよ、というのは、できない相談です。無理なことを求めすぎです。

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