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財政悪化の窮余の処理策ー再建の殿様・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(1-5-13.14)

財政悪化の窮余の処理策 ー再建の殿様・鍋島直正公伝(久米邦武著)を読む(1-5-13.14)

第1編 公の出生以前と幼時

第5巻 財政困難と盛姫君入輿

第13・14章 佐賀の財政困難

・財政悪化の窮余の処理策(佐賀藩の場合)

  佐賀藩では、財政悪化で

銀貨1匁(もんめ)=80文であったのが→380文→660文

米筈(藩の紙幣のようなもの)1升=40文が→15文→3文

という物価高騰、インフレとなった。

・結局、旧米筈の代わりに、4分の1の新米筈を発行して、4分の3の旧米筈を償却した。これは、藩政府のごまかしであるが、何とか、藩民の騒ぎも静かになった。

(コメント: 藩民も、価値のほとんどない旧米筈よりも、確実に米と交換できる新米筈に、不承不承に従ったのでしょう。 日本の1000兆円を超す負債について、先日のTVの出演者は、外に手立てがないから、この方法をとるしか方法がないと言ってました。役人の考えることは、今も昔も変わりません。担当者にしてみれば、外にどうしたらいいんですか? 自分(担当役人)が作った借金でなし、日本国民全部が負担を分かち合うべきだという理屈でしょう。)

・極めつけの悪策は、上記のように、銀貨の価値が低下しているのに、藩役所からの支払いは、公定の価格80文で支払い、他方納税者は、相場の価格(660文)で納付すべきと定めたことである。そのため、大変な騒ぎとなったが、力で承服させた。

・財源の一つは、富札(宝くじ)であった。
一本144匁として、1万本発行した。その売上高は、1440貫となり、当たりくじや費用を差し引いて600貫のもうけとなった。はじめは、皆、投機欲に駆られて買ったが、当たりくじが少なく、くじを買うため家財を売り払う者もでて来たことや、発行くじも、半分が残るようになった。それで、反対論も出て、直正公の時に中止となった。

・人頭税:一人あたり、銀4匁の人別銀を課した。これは、過酷な増税となったので、藩の担当重職は、不満の意を表し辞職をした。

・かくて、最後は、3年間、知行を、最低の生活費(相続米渡り)にすることとなった。

・米筈発行担当の中牟田が、無断で米筈を発行する事件も起きた。この米筈は無効で、色が赤色であったことから「赤札事件」といわれた。中牟田は自殺した。もう一人の担当者鍋島源右衛門は、老体であり、預け中に、医療の手当も受けず悲惨の病死を遂げた。

・質屋・酒造を禁止した。贈答・飲食の集会禁止とした。

(コメント:日本の気の遠くなるような財政赤字も同様の運命をたどるのでしょうか。「円」への信認が亡くなれば、行き着く先は、同様のことになります。考えても仕方がないですが、漠然たる不安感をかき立てます。)

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