この制度を利用するには、法務省のサイトに案内がある。
この制度は、便箋に遺言事項を書いて、法務局に預けると言う安易なイメージとはかなり違う。
しかし、自分の肉筆で書くというアナログ遺言書を、自動読み取り処理装置で読み取ってデジタル化し保管するため、いろんな条件がつき、それなりに面倒であり気力体力を要する。
・遺言書を預かった法務局としては、その遺言書が本人が書いたものかどうか確認し、本人が亡くなった後、誰に通知するのか分からないので、その点も確認したいために、いろんな条件をつける。
要するに、遺言書を作った人が、自分が亡くなった後の事まで手続き的に揉めないように、事前に準備をする必要がある。自分の死後のことまで生前に準備しなくてはならないため面倒な感じがする。相続財産に関心がある相続人なら、必要書類をそろえる労をいとわないだろうが、亡くなってあの世に行っている遺言者が、自分のものではなくなった相続財産について、あれこれ準備するのも難儀な感じがする。
いくつか例をあげれば
・まず、遺言書を書く紙は、便箋ではいけない。 A4サイズで、上下左右に○○mmの余白が必要と決まっている。そうでないと機械で読み取れない。修正液や修正テープを利用してはいけない。ページ数も書かなければならない。預金通帳の印字が薄すぎると機械で読み取れない。
・法務局に預ける際は、まず予約をし、本人1人が出頭しなければいけない。夫婦2人ではダメである。弁護士が本人に変わって説明するというのは予定されていない。病院でよれよれの状態では、法務局まで行けない。法務局まで自ら出頭できる体力が必要だ。
・さらに、遺言書を書いた人と出頭した人が同一人物であるという本人確認の証明書、写真付きの免許証みたいなものが必要である。
・本籍・住所を確認する住民票の写しが必要である。早く用意しても3ヶ月経過すると無効になり、もう一度用意しなければならない。
・申請書は、自動読み取り機で読み取るため、パソコンでの入力を予定している。草書体では読み取れない。パソコンがなければ利用しにくい。
・相続人、受遺者、遺言執行者などの氏名・住所・生年月日は、後で通知するために住民票記載のとおりに正確に記載しなければならない。
同様の理由で、遺言書を書いて、幸いにも長生きした場合は、相続人等が引っ越したりすれば、その都度、予約をして変更届出を出さなければならない。そうしないと、本人が亡くなった後、それを通知すべき相続人等の住所がわからなくなってしまうからだ。
・なお、法務局は、遺言書の形式面、例えば余白が狭いとか言うようなアドバイスはするが、遺言書の内容、例えば長男に相続財産を多くやりすぎて、後でもめるかもしれないとか言うような内容については一切相談に応じない。
・この制度は外国人も利用できるし、海外に資産がある場合も利用できる。しかし、すべて翻訳しなければならないし、そう簡単では無い。
・この制度は、裁判所の確認(検認制度)を要しないし、公正証書のような費用もかからず、証人も必要としないメリットがあるとして作られたが、後日の紛争を防止するために、かなり厳格な手続きになって利用しやすいとは言えない。
この制度の利用状況は、令和2年7月・ 8月・10月は2,000件台であったが、その後は1,000件台である。
コロナが流行り、突然亡くなることを考えれば、費用はかかるけれども事前に相談した方が良いでしょう。