本日(平成31年1月13日)から、自分で作成する遺言(自筆証書遺言)の目録をパソコンで作成することもできるようになります。また目録の代わりに不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)や預金通帳の写しを目録として付けることも可能になります。その場合は、各1枚1枚に署名と押印をする必要があります。
これまで、公正証書遺言の制度がありましたが、公証人への報酬が必要だったり、証人2人を準備する必要があったり,事前に遺言の内容を明らかにする必要があったりということで、利用するのに金銭的・心理的障害がありました。
本日からは、簡単に自筆証書遺言ができるようになります。
加えて、 2020年7月10日からは、このように作成した自筆証書遺言書を法務局で預かる制度が施行されます。これによって、遺言制度が、より利用しやすくなります。
例えば、次のような場合は、遺言をしておくべきでしょう。
・配偶者や子供がいなくて、兄弟姉妹と疎遠である場合。
・病気や障害を持つ配偶者や子供がいる場合。法定相続分以上の財産をその障害者に残すため。
・相続人以外の人に財産を残したい場合。息子の嫁とか介抱してくれた人などに残すため。可愛い孫に残すため。息子の嫁に対しては、今般相続法規の改正で手当がなされましたが、まだ施行されていません。
・相続人の中に財産を残したくない人がいる場合。親孝行どころか、恥さらしの娘やドラ息子に残したくない場合。
・相続人が多数いる場合。兄弟が死亡し、その子供が多数いると遺産分割協議が複雑となります。
・相続財産が多額の場合。相続人に欲が出て遺産分割がまとまらなくなります。
・相続財産に不動産があると共有となり、共有分割がもめる場合があります。配偶者の居住権については、改正法で手当がなされましたが、まだ施行されていません。
・事業承継の場合、相続で株式が共有となり、会社経営が不安定となります。また社長所有の不動産を会社に提供していた場合、その不動産が相続により共有となって、不安定となります。
・ 遺言者が亡くなった後に、可愛いペットの世話をしてもらいたい場合など。
このように、本日からは、遺言書の作成が今までと比べて容易になります。
今後さらに、この自筆証書遺言改正以外に
・相続の場面における遺留分減殺請求権の金銭債権化、遺言執行者の権限強化、配偶者の保護、特別の寄与等の規定が、今年2019年7月1日から施行されます。
・さらに配偶者が居住する権利の保護の規定が2020年4月1日から施行されます。
いずれも、細かい規定です。
そこで、遺言書を作成する場合、現在の法律を前提に作成して、改正法が施行された後も健康に生活していれば、遺言書を書き直す必要が出てくる場合もあります。 また、改正法を見越して遺言書を作成していた場合、改正法施行前に亡くなってしまいますと、遺言書の内容が、改正前の法律の定めと合わなくなります。難しいところです。
このように改正されましたが、それでは、相続争いは減少するかといいますと、逆にますます増大するのではないかと思います。相続法規が複雑となっており、十分に理解しないと遺言で実現したい内容が実現できない場合も出てくるからです。そして、残された相続人は、遺言書の内容理解について争うことになるでしょう。
例えば、配偶者といってもピンからキリまであります。当然保護されべき糟糠の妻から、熟年離婚を考えて弁護士に相談中の配偶者、後妻業みたいな後妻、若い後妻、若い外国人後妻まで色々です。
また婚外子にも、これまで言われなき差別を受けてきたので、相続分だけはちゃんと受け取りたいと思うでしょう。配偶者との間で相続争いが起きる可能性があります。
今回の相続法規関連の改正は、家族が徐々に崩壊してバラバラになる可能性が高くなっている現実に対応したものです。
何れにしても、法定相続分で仲良く遺産を分けることができにくい現実に備えたものですが、さらに争いは増大するのではないでしょうか。